事業拡大を行うメリット・デメリット~大きな効果が得られるのはどんな企業か~
事業を拡大することの効果は、企業の状況や取り組み方によって異なります。
大きなメリットが得られることもあれば、デメリットの影響が大きく出てしまうこともあるのです。
具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのか、各社が事業拡大について検討するときに知っておきたい大事なポイントを紹介していきます。
事業拡大がもたらすメリット
事業拡大には、収益面、組織・人材面、市場での競争力など、さまざまな面でメリットがあります。
そしてこれらのメリットは相互に関連し合い、好循環を生み出す可能性もあります。
ただし、その効果は企業の状況によって異なるため、自社の特徴を踏まえた判断が重要となります。
収益面でのメリット
事業拡大に伴い売上が増加する見込みが高まります。また、「規模の経済」が働き始めることも期待できます。
これはつまり「生産量や取引量が増えることによる、1単位あたりのコストが下がる現象」のことであり、たとえば仕入れ量が増えることで得られる割引率の向上であったり、固定費を多くの製品で分散できたりする効果が該当します。
また、事業領域が広がることで収益源が多様化させられます。
これにより、特定の商品や市場の変動リスクを分散させることができ、より安定した経営が可能となるでしょう。
さらに、取引規模の拡大は取引先との価格交渉力を高めることにもつながり、より有利な取引条件を引き出せる可能性も出てきます。
組織・人材面でのメリット
組織・人材面では「優秀な人材の確保」や「従業員のモチベーション向上」といった効果が期待できます。
組織が大きくなると充実した教育制度も整備しやすくなりますし、会社の知名度も高まることから、より多くの求職者を集めやすくなるのです。
より良い職場環境を整えることが優秀な人材の採用にもプラスに働くことでしょう。
そして新しい部署の立ち上げや今までにない業務への取り組みなど、こうした変化がモチベーション向上にもつながります。
市場における競争力の向上
事業規模の拡大は、市場での存在感を高めることにつながります。このことは取引先や金融機関からの信頼獲得にも寄与し、より大型の契約を取れるようになったり、有利な条件での取引が可能になったりすることが期待できます。
そしてこうした変化はさらなる事業機会の創出につながっていきます。新たな取引先との接点が生まれていくなど、好循環を生み出すきっかけとなるでしょう。
事業拡大に伴うデメリット
事業拡大にはリスクも伴います。事前にどのようなリスクや課題があるのか把握し、適切な対策を講じることができるよう備える必要があります。
見過ごしていると経営が圧迫されてしまいますので、主なデメリットとその対処法についてチェックしておきましょう。
財務面でのリスク
事業拡大に伴う財務面でのリスクは、大きく分けて「初期投資の負担」と「固定費の増加」という2つの側面から説明することができます。
初期投資の負担 | 設備投資(工場、店舗、機械設備など)や採用費用、システム導入費などの一時的な大型支出が発生する。資金繰りの悪化や借入金の増加につながりやすい。投資の回収期間が想定より長期化してしまうと、経営を圧迫する要因となる。 |
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固定費の増加 | 人件費、家賃、システムの維持費など、売上の増減に関係なく毎月発生する費用が増加。売上が伸び悩んだ場合の収益への影響が大きく、一度増やした固定費の削減は容易ではない。特に人件費は簡単には削減できないため注意が必要。 |
これらの財務リスクへの対応として、段階的な投資計画の策定・実行を心がけるべきです。
すべての投資を一度に行うのではなく反応を見ながら順次展開していくことで、リスクを小さく抑えることができるでしょう。
固定費に関しては、アウトソーシングの活用も検討するなど柔軟な対応が重要となります。
組織運営上の課題
組織の拡大に伴い、社内でのコミュニケーション方法や意思決定の仕組みにも変化が必要となることがあります。
少人数だと円滑に進んでいた情報共有や意思決定が、規模の拡大とともに複雑化し、時間がかかるようになってしまうことも珍しくありません。
ほかにも、部門間の連携がスムーズに行かなくなったり、変化への対応が遅くなったりする可能性も高まります。
こうした課題に対しては、適切な権限の設定や意思決定プロセスの確立が必要です。
また、定期的に部門間をまたぐミーティングを実施したり、全社的にコミュニケーションツールを導入したりするのも円滑な運営に効果を発揮するでしょう。
どのような企業が事業拡大を進めるべきか
事業拡大が上手くいくかどうかは、入念な準備と、資力や人的な余力が大きく関わってきます。
単に拡大意欲があるだけでは成功は難しいため、以下の点に留意しましょう。
- 市場の分析をしているか
・・・自社の強みが活かせる市場であるか、また、その市場に十分な成長性があるかを慎重に判断する。既存顧客からの要望が多い分野や、現在の事業との相乗効果が期待できる市場であれば、事業拡大の有力な候補となる。 - 安定した収益基盤があるか
・・・現在の事業で十分な利益を上げられていない企業が安易に事業を拡大すると、経営をさらに圧迫するリスクが高まる。現状、数年にわたり安定的な利益を確保できているかどうかを確認することが重要。また、拡大への取り組みには大きな資金が必要となることも多いため、十分な自己資金あるいは調達能力も必要。不測の事態にもある程度対処できる資金的な余裕があると安心。 - 新たな取り組みに向き合う余裕があるか
・・・現状の業務で手一杯で日々慌ただしい状態だと、拡大に向けた準備すら難しくなる。事業拡大に取り組む際の、中核となる人材を確保できるかどうかも重要。
もし、「現状の事業で赤字が続いている」「目の前の業務で手一杯」「必要な人材確保のめどが立っていない」「市場の見通しが不透明である」といった状況にあるのなら事業拡大に踏み切るのはリスクが大きいといえるでしょう。
反対に、そのような大きな懸念がなく経済的にも組織的にも余力があるのなら事業拡大のメリットを最大限活かすことが期待できます。