事業拡大の方法|3つのパターンと実践のポイントについて
事業拡大を実現するための方法は、「既存商品・サービスの展開」「新商品・サービスの開発」「外部との連携」という 3つのパターンに分類できます。
当記事では、それぞれのパターンにおける具体的な実践方法と、事業拡大を成功に導くためのポイントを解説していきます。
事業拡大に向けて必要となる準備
事業拡大を成功させるには、自社の現状把握と市場分析が不可欠です。
具体的には、財務状況や人材などの自社リソースの分析、競合状況や市場動向の調査、そして経営資源の評価という 3つの観点から準備を進めていくことが重要です。
1 | 自社の経営状況分析 | 売上高や利益率などの財務指標のチェックに加え、キャッシュフロー、借入余力なども詳細に把握する。特に、事業拡大に必要な投資額と、その資金をどのように確保するかという点については具体的な見通しを立てておく必要がある。 |
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2 | 市場環境の調査 | 業界全体の成長性や競合他社の動向、規制環境の変化などを多角的に分析する。その際、単なる市場規模の確認だけでなく、将来的な変化や新たなビジネスチャンスの可能性についても検討を行う。 |
3 | 経営資源の評価 | 人材や設備、技術力・ノウハウなど、自社が保有する経営資源を客観的に評価する。この段階で自社の強みと弱みを明確にしておき、事業拡大の方向性を見極めることが大事。 |
以上の準備を丁寧に進めておくことで、事業拡大の取り組みにスムーズに移行することができるでしょう。
パターン1:既存商品・サービスによる事業拡大
既存商品、既存サービスに焦点を当てた事業拡大は、すでに実績のある商材を活用するため、比較的リスクを抑えながら成長を狙うことができます。
具体的には、新規顧客の開拓と既存顧客との取引拡大という 2つのアプローチが有効です。それぞれのアプローチについて、実践的な手法を見ていきましょう。
新規顧客を開拓する
事業拡大の第一歩として「新規顧客の開拓」が挙げられます。
そのためには、自社にとって最適なターゲット市場を見極めることが重要です。
これまでの実績やノウハウを活かせる市場を選定できれば成功確率を高めることができるでしょう。
たとえば、現在の主要顧客と似た特性を持つ市場や、すでに保有している販売チャネルを活用できる市場などが有力な候補となります。
ターゲット市場が定まったら、「販売チャネルの拡大」も検討します。
実店舗の出店や ECサイトの構築など、市場特性に合わせた最適なチャネルを選択します。
このとき、各チャネルの特性や費用対効果を十分に検討し、段階的に展開していきましょう。
さらに、選定した市場と販売チャネルに適応した、効果的なプロモーション戦略を考えます。
ターゲットとなる顧客層の特性や当該市場における競合状況も踏まえ、もっとも効率的な手法を模索するのです。
既存顧客との取引を拡大する
新規顧客の開拓と並行して「既存顧客との取引拡大」も進めると良いです。
すでに信頼関係が構築されている既存顧客に対しては、その関係性を活かした深耕営業(しんこうえいぎょう:関係性をさらに深めて取引を広げる営業手法のこと)が可能です。
新規開拓と比べて投資効率が高い傾向にありますので、着実な成果が期待できます。
そのためにまず取り組むべきは、「既存顧客の利用状況や潜在的なニーズを踏まえた追加提案」です。
現在の取引内容をよく調べ、顧客が抱える課題や将来的なニーズを予測することで、効果的な提案が見えてくるでしょう。
パターン2:新商品・サービス開発による事業拡大
新たな商品・サービスを開発することも、事業の幅を広げていくうえで重要な取り組みです。
この方法では「現在の事業領域での商品ラインナップの拡充」および「新規事業分野への参入」という2つのアプローチが考えられます。
商品・サービスラインナップを拡充する
現在の事業領域において商品やサービスラインナップを拡充するには、まず顧客や市場の分析が必要です。
顧客の声や競合動向など、多様な情報を収集・分析することで市場が求めるものが見えてきます。
- 顧客ニーズを分析するための情報源の例
- カスタマーサポートへの問い合わせ内容
- 営業担当の持つ顧客の情報
- SNSで顧客等が言及している内容
- アンケート調査の結果 など
- 市場動向を分析するための情報源
- 業界レポート
- 専門家へのヒアリング
- 各種統計データ など
また、開発プロセスの確立も必要です。
開発期間や必要な投資額を明確化すること、社内の開発体制を整備することが欠かせません。
特に、複数のプロジェクトを並行して進める場合はリソースの配分や優先順位付けが重要となってきます。
開発した商品・サービスについては顧客からのフィードバックなどに注視し、今後の改善に活かしていきましょう。
新規事業分野へ参入する
新規事業分野への参入も検討する価値があります。
このとき、参入分野の選定が特に重要で、市場の成長性や競合の状況はもちろん、自社の強みが活かせる分野であるかどうかを慎重に見極めなくてはなりません。
さらに、新規参入に向けて必要な経営資源の確保も不可欠です。人材の採用・育成、設備投資、技術やノウハウの獲得など、不足するリソースをどのように補充していくのか、計画を立てて進めていきます。すべてを社内で賄う必要はなく、業務提携や外部委託の活用も視野に入れて柔軟に対処していきましょう。
パターン3:外部との連携による事業拡大
自社単独で拡大していくのに限界を感じるとき、あるいは規模の大きな拡大を図るときは、外部企業との連携も視野に入れると良いです。
主な方法として「業務提携」や「 M&A」が挙げられます。
業務提携を活用する
業務提携とは、要は「複数の会社が良いところを活かし合う協力関係を築くこと」を意味し、互いに独立した状態で大きな発展を目指すことができます。
たとえば、 A社が持つ技術と B社が持つ販売網を組み合わせて新しい商品を売り出すといった形です。
M&Aのように組織は統合せず、独立した状態で販売や生産、技術開発など特定の分野で協力関係を結ぶのが特徴です。
業務提携を成功させるには適切な提携先を選定しなくてはなりません。
《 提携先の主な選定基準 》
- お互いの強みを活かせる企業であること
- 経営理念や企業文化に大きな違いがないこと
- 財務状況が健全であること
- 将来的な成長が期待できる企業であること
M&Aによる拡大を狙う
M&Aとは、要は「ほかの会社を合併したり買収したりすること(あるいは合併や買収されること)」を意味し、別の会社を買い取って1つの会社になったり、対等な立場で複数の会社が1つになったりすることで大きな発展を目指します。
組織そのものから大きく変化することになりリスクも伴いますが、上手くいけば短期間での大きな事業拡大も期待できます。
業務提携同様に買収先の選定が成功を大きく左右することになりますし、契約前には「デューデリジェンス」と呼ばれる詳細な調査を行うのが一般的です。
財務状況や取引先との関係性、従業員の状況、法的なリスクの有無や程度などを細かく調べていく作業が欠かせません。
資金調達と計画の策定が重要
いくつか手法を紹介しましたが、取り組みが大掛かりであるほど資金調達が必要となります。
まずは資金需要を正確に把握し、そのうえで最適な調達方法を検討していきます。
資金調達の一般的な手法は「金融機関からの借入」「補助金や助成金の受給」「(株式会社の場合)株式の発行」「社債の発行」などが挙げられます。
それぞれに調達規模や条件、必要な期間などが異なるため、自社の状況に合ったものを選ぶようにしてください。
加えて、投資した資金を今後どのように回収していくのか、綿密な計画を策定しておくことも大事です。
具体的な数値目標を定め、その後も定期的に進捗を確認しながら軌道修正を行いましょう。
事業拡大のためにしないといけないこと、自社に合った戦略の策定などは、専門家にも相談しながら確認していくことをおすすめします。