会社の親族内承継で事前に知っておきたい要点をピックアップ
経営者の子どもや親族に会社を引き継ぐ「親族内承継」は、中小企業においてよく選ばれる事業承継の一形態です。身近な信頼できる相手に引き継げる安心感がありますが、法務・税務の観点からいくつか押さえておいた方が良いポイントがあります。
準備を先送りにすべきではない
親族内承継には、「後継者を早い段階から育成できる」「経営理念や企業文化を共有しやすい」「社内外の関係者に受け入れられやすい」などのメリットがあります。
一方で「家族だから」という気安さから、本格的な計画を立てないまま準備を先送りにしてしまう事態も少なくありません。会社の所有(株式)と経営(代表権)を同時に移すのか、段階的に移すのかによっても手続きや税負担は変わってきます。
いつ・何を・どの順番で進めていくのか無計画に進めると、手続き漏れや課税関係の見誤りが起こりやすくなりますので、まずは「親族内承継でも早期に準備に取りかかり、計画的に取り組むべき」という点は押さえておきましょう。
3年以上の期間を要するケースが半数以上
経済産業省「事業承継ガイドライン」では、後継者の決定から事業承継が完了するまでの期間として3年以上かかるケースが半数を超えていると示されています。10年以上かかる割合も少なくありません。
後継者が経営の実態を把握し、取引先・金融機関・従業員から信頼を得るまでには一定の時間が必要であり、「引き継ぎたいと思ったとき」から動き始めても間に合わないかもしれません。
多くの企業でこれだけの時間がかかっているという実情も理解しておくとよいでしょう。
相続税・贈与税の負担を見積もる
事業承継に伴い税負担が発生することもあります。
第三者とのM&Aであれば株式の売却などを行うことになりますが、親族内承継だと株式の贈与によって経営権を移転することが考えられます。贈与自体は無償で行われる行為ですが、このとき後継者である受贈者には贈与税が課税されてしまうのです。
※贈与を実行する前に経営者が亡くなると、相続あるいは遺贈によって株式が移転する。このときは贈与税ではなく相続税が課税される。
そのため税負担の規模感を早めに把握しておくことが大事です。自社株の評価額を専門家に算定してもらいましょう。
なお、非上場株式の承継に伴う贈与税・相続税に関しては「事業承継税制」が利用できるケースがあります。一定の要件を満たし認定を受けることで納税の猶予が受けられ、さらに所定の事由が生じると、その猶予税額の全部又は一部が免除されることもあります。
事業承継税制に関しても、専門家からアドバイスを受けておくことをおすすめします。
後継者に資産が偏ってしまうときの注意点
後継者に株式を集中させることで、後継者とその他親族との間で揉め事が起こる危険性があります。
特に相続の場面でトラブルになりやすいです。相続によって株式を取得させる場合だけでなく、生前贈与によって取得させていた場合でも「○○(後継者)は遺産の前渡しを受けていたのだから、相続分はその分減らすべきだ」などと主張されるかもしれません。
このような事態を防ぐため、契約書や遺言書に「持戻し免除(贈与分を考慮せず遺産分割すること)」の意思表示を記しておくことも検討しましょう。
また、遺留分と呼ばれる相続人の最低限の取り分にも配慮し、相続時に極端な偏りが生じないようバランスを取ることも意識すべきでしょう。
代表者交代後も残る個人保証への対処
現経営者が会社の借入について個人保証を負っている場合、代表権だけを移しても前代表者の保証責任は残り続けます。
後継者が新たに保証を引き受けることで事業の継続性を担保する必要がある一方、過度な個人保証は後継者の経営意欲を削ぐ要因にもなります。
そこで、保証の免除や後継者への切り替えについて金融機関と交渉することも視野に入れておきましょう。
その際、個人保証の解除・見直しに際して共通の目線を持てるよう定められた自主規制規範である「経営者保証に関するガイドライン」を有効活用すると良いです。法人と経営者の関係の明確な区分・分離、財務基盤の強化、財務状況の正確な把握と適時適切な情報開示といったポイントを満たすことで、事業承継に伴う経済的リスクや個人保証の負担を軽減できる可能性があります。
事業承継の計画を策定しよう
各課題を適切に対処しながら円滑な親族内承継を実現するには、スケジュールや対応事項を一覧にするなどした、事業承継の計画書を作っておくことが推奨されます。
さらに事業承継に関しては従業員や取引先、金融機関などと共有することも有効です。その際、計画書が作成できていると情報共有がスムーズですし、協力も得やすくなるでしょう。金融機関との交渉の場でも計画性をアピールすることができます。
法務や税務などの高い専門性と広い知識が必要となりますので、計画の策定にあたっては事業承継について相談・コンサル対応できるプロの活用をお勧めします。










