ストックオプション取引における確定申告|必要書類や注意点について
「ストックオプションをもらったものの、税金についてどう処理すればいいのかわからない」とお悩みの方もいると思われます。自社株式を所定期間内に一定価格で購入できる権利のストックオプションは、社内の人員に対しインセンティブを与えるために活用される例も増えていますが、これを受けた個人は利益のことだけでなく税務についても認識しておくことが大事となります。
そこで当記事では、ストックオプション取引がなされたときの確定申告について簡単に説明をしていきます。
ストックオプションの種類を整理
まずは税制上のストックオプションの種類について知っておきましょう。
①税制適格ストックオプションや②税制非適格ストックオプション、③有償ストックオプションに分類されており、それぞれ課税時期や計算方法などが異なります。
税制適格SO | 無償発行や譲渡禁止の制限など税制上の要件を満たしたSOのこと。 権利行使時の課税はなく申告も不要。株式を売却したとき、「譲渡価格-(取得費+譲渡費用)」から計算される譲渡所得に課税がある。 |
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税制非適格SO | 無償ではあるものの税制適格SOに該当しないSOのこと。 株式売却時の課税、権利行使時の課税がある。権利行使時は「(権利行使時の株価-権利行使価格)×株式数」から計算される所得に課税がある。 |
有償SO | 公正な価格を払い込んで取得するSOのこと。 無償で付与されるものではないため給与とはみなされず、権利行使時の課税もない。株式譲渡時には「譲渡価格-(取得費+譲渡費用)」から計算される譲渡所得に課税がある。 |
※SO:ストックオプション
いずれも権利が付与された時点、株式が割り当てられた時点では確定申告不要です。しかし税制非適格ストックオプションについては権利行使の時点、株式が社員のものになった時点で給与所得としての申告が必要になります。
その後売却をするときは、どの種類においても譲渡所得としての課税を受け、確定申告も必要になります。
ストックオプションに関する確定申告の必要書類
ストックオプションに関して確定申告をするときは、一般的な確定申告を行う際にも必要となる確定申告書の「第一表・第二表」と分離課税用に作成する「第三表」、そして株式に関する譲渡所得を計算するために作成する「計算明細書※」を用意する必要があります。
※税制適格ストックオプションの場合は専用の計算明細書を使用する。
まずはこれら申告書等の書類のうち、計算明細書から記入を進めていきます。譲渡することで得た金額や取得にかかった費用、譲渡にかかった費用などを正確に記載していきます。これらの情報をもとに取得金額が出せます。
明細書の記入ができれば、そこから第三表に数値を転記。さらに第一表の収入金額欄、所得金額欄などを埋めていき、税額の計算を進めてきます。
また、ストックオプション取引について証明できる書類も準備しておきます。会社発行された書類、その後の取引に際して発行された明細書や証明書類は大事に保管しておきましょう。
ストックオプションの確定申告で注意すること
ストックオプションと課税の問題・確定申告についてはいくつか注意しておきたい点があります。
1つはストックオプションの種類を明確にすることです。特に税制適格ストックオプションについては要件が細かく定められています。厳しい要件を満たす必要があり、権利行使時には課税がされず権利を行使することで得た株式について、これを譲渡したときのみに課税される取り扱いとなっています。
しかしながら、これは所得税の負担がそのまま減るという意味ではありません。課税の繰り延べに過ぎないという点に留意しましょう。
また、有償ストックオプションに関しても課税機会は1度です。売却により株式を譲渡したときに課税される取り扱いになっています。
しかしながら、有償とはいえ公正な価格より低い額で取得したときは経済的利益を得たとして取得時に課税されてしまいます。この点も注意しましょう。
最後に、譲渡所得等の確定申告忘れ、申告漏れなどのないよう、慎重に確定申告の手続を進めることに注意しましょう。無申告加算税やその他のペナルティが課されるリスクがあります。