医療費控除の対象となる費用・ならない費用とは?具体例を挙げて解説!
医療費控除は、年間10万円以上の医療費を支払った方が受けられる控除のことで、税負担を軽減するために重要な役割を果たします。個人事業主から給与所得者まで幅広く適用することができ、多くの医療費を支出したという方は医療費控除を忘れず申請することをおすすめします。
とはいえ医療に関わる費用であってもあらゆるものが控除対象になるわけではありません。そこでよく問題となる費用を例に取り上げ、当記事で「医療費控除の対象になるもの・ならないもの」を整理していきます。
医療費控除の対象となる費用の例
病院での診察、施術に関して病院で支払った費用は医療控除の対象です。
さらに、次の費用についても医療控除の対象となります。
- 通院にかかる交通費
- 出産費用
- 医薬品代
- おむつ代
これら以外にも医療費控除の対象となる費用はありますが、以下ではピックアップした4つについて詳しく説明していきます。
通院にかかる交通費
通院にかかった交通費も基本的には医療費控除の計算に含めることができます。特に、持病がある方や高齢者などは通院の頻度も多く、交通費が割合大きな負担になっていることもあるでしょう。医療費そのものではないものの、交通費も医療費控除の対象になることを覚えておくと良いでしょう。
ただし、「運賃についての記録を残しておくこと」に留意しましょう。
ほとんどの場合、運賃についての領収書が得られません。そのため電車に乗るとき、バスに乗るときなど、さまざまな場面で発生した費用についてすべてメモを取っておかないといけません。「いつ」「誰と」「どの医療機関にかかったのか」事細かく記録しておくことで信ぴょう性も増します。
毎度メモを残すのは大変手間であるため、記録を残すために交通系ICカードの利用をおすすめします。
なお、年齢や病状によっては1人での通院が難しいケースもあるでしょう。状況によっては付添人の交通費を医療費控除に含めることができます。
出産費用
出産に伴うさまざまな費用が医療費控除の対象となります。例えば次のような費用です。
- 定期検診や検査
- 通院費用
- 入院時のタクシー代(出産にあたっての入院時には電車・バスの利用が困難なため、タクシー代も医療費控除の対象になる)
- 病院から出される食事に対する費用
- 切迫早産などの事情による入院費用
一方で、次の費用については医療控除の対象にはなりません。
- 妊娠検査薬の購入費
- 里帰り出産に要する移動費
- 入院時の洗面具等の日用品代
- 入院中の外食や出前の費用
- 病院から用意された基本のベッド代と、自分で希望を出した個室部屋におけるベッド代の差額
医薬品代
処方箋により薬局で買った医薬品について、その購入費は基本的にすべて医療費控除の対象となります。
また、薬局やドラックストアで購入する市販の風邪薬等も医療費控除の対象となることがあります。ただし控除の計算に含めるには、その市販の商品が「治療・療養のために必要なものであること」「一般的な支出の水準を大きく上回らないこと」が求められます。
おむつ代
おむつ代は通常医療費控除の対象ではありません。しかし、傷病により「6ヶ月以上寝たきりの状態」であって、「医師による治療の下、おむつが必要と認められる場合」であれば、医療費控除の対象に含めることができます。
申告の際には、治療にあたっている医師が発行する証明書(おむつ使用証明書)が必要です。
※おむつ代に関する医療費控除の適用が2年目以降であり、要介護認定を受けている方は、市町村長等が交付するおむつ使用の確認書等を証明書に代えることが認められる。
おむつ代の医療費控除の適用について年齢制限は設けられておらず、高齢であっても児童であっても医療費控除に含めることは可能です。ただ、夜尿症の場合は認められず、怪我や病気が原因で寝たきりになっていなければなりません。
医療費控除の対象とならない費用
続いて、医療控除の対象にならない費用の例を以下に示します。
- 美容整形費用
- メガネやコンタクトの購入代金
- 通院にかかるガソリン代やタクシー代
- 健康診断・人間ドックの費用
- 差額ベッド代
これらは、一応医療に関連がありそうに思えますが、医療費控除の制度上は計算に含めることが認められていません。各費用について説明していきます。
美容整形費用
美容整形にかける費用は原則として医療費控除の対象外です。ただ、同じような施術内容でも美容整形なのかそうでないのか、線引きが困難なケースもあります。その場合、医師により必要な治療と認められるかどうかがポイントです。
例えば、ほくろを取る手術を行う場合、見た目を気にして取り除く場合は医療行為ではなく、医療費控除の対象外です。ほくろが原因で悩み、精神的につらい思いとしていたとしても結果は変わりません。
ただ、ほくろを取り除くことが健康上必要な行為であれば医療費控除に含めることができるでしょう。「ほくろに見えて実は腫瘍だった」などと診断されて施術した場合はもちろん医療費項に含めることができます。
その他、まぶたに対する美容整形の施術、シミ取りレーザーなども同じように判断できます。単に外見を変えるためだけの施術であれば医療控除の適用外ですが、健康上必要なら医療費控除の対象です。上まぶたが開けにくいという支障をきたしており、眼瞼下垂症を治すためであれば、そのための費用は医療費控除の対象です。
メガネやコンタクトの購入代金
メガネやコンタクトを購入するための代金も基本的に医療費控除の対象外です。これらは視力が低下した方にとって欠かすことができず、その意味で美容整形費用とも異なる支出です。しかしながら、遠視や近視を矯正するためであっても、これを控除額に加えることは認められていません。
控除対象に含めることができるのは、「医師による治療を受けるため直接必要な眼鏡を購入するための費用」です。視機能改善に向けて治療を行っており、視力の発育を促す目的で眼鏡の使用を指示したときは、購入費用を医療費控除に含められます。
白内障患者が術後回復するまでの期間装着する眼鏡の購入費用なども同様に対象です。
通院にかかるガソリン代やタクシー代
通院時の電車・バスの費用は医療費控除に含めることができますが、自家用車で通院するときのガソリン代は含めることができません。駐車場代も含められません。特別の必要性がない限り、タクシー代についても対象外です。
例えば、上述の通り陣痛時のタクシー代は医療費控除に含めることができますし、その他「急病でやむを得ず利用した」「アクセスが悪く、電車やバスでの通院ができない」「歩行が困難で公共交通機関の利用が困難」といった場合にはタクシー代を医療費控除に含めてもかまいません。
病院が遠隔地にある場合、交通費も相当に高くなります。このときは、その遠隔地に行く必然性の有無が評価されます。「有名な先生に診て欲しいから」といった理由で当然に認められるものではありませんが、「この先生しか対応できないから」という理由があるのなら認められやすいでしょう。
健康診断・人間ドックの費用
健康診断や人間ドックなど、予防を目的とした医療関連の費用は、医療費控除の対象から外されます。ただし、検査の結果、病気などが見つかって治療が始まるケースもあるでしょう。この場合、治療費が対象になることはもちろん、その前に行った健康診断や人間ドックの費用も医療費控除の対象に含められます。
例えば、メタボリックシンドロームに関する特定健康診査を行ったとしましょう。このときの費用は疾病の治療を目的としたものではありませんし、原則として対象外です。
しかしながら、診査を通して高血圧症や脂質異常症、糖尿病などが発覚し、引き続き指導等が行われたのであれば、全体として医療費控除の対象になります。
差額ベッド代
「ベッド代」「部屋代」などさまざま呼び方はありますが、入院費用は基本的に医療費控除の対象です。
もっとも診療等を受けるために必要であること、通常必要とされる水準であることがポイントです。例えば入院時に大部屋を案内されることもあり、これは通常医療費控除の対象です。しかし、自己都合で、より快適さを求めて個室に移動する場合などには、特別のベッド代(特別療養環境室料)が発生します。これは通常必要とされるものではありませんので、差額のベッド代が医療費控除の対象から外れます。
ただ、個室が常に対象から外れるということではありません。個室しかない病院の場合だと個室のベッド代が医療費控除の対象となります。
また、ベッドに空きがなく病院側の都合で個室に案内されることもあります。このとき、ベッド代が医療費控除に対象になることは当然、そもそも差額のベッド代すら支払う必要はないと考えられています。
これら医療費控除の対象・対象外の判断をするには、個別具体的な状況を見る必要があります。不安がある方は、税理士などの専門家に相談して解決しておくことをおすすめします。