相続後に確定申告が必要になる4つのケースについて
相続により財産を受け取った場合、相続税の申告により処理しますので、確定申告を行う必要はありません。ただ、相続財産を売却したり相続財産から収入を得たり、特定の場合には後々相続人にも確定申告が必要となります。
相続後、どんなケースで確定申告が必要になるのか、当記事で解説いたします。
ケース①相続財産を売却した
確定申告が必要なのは所得税が課税される「所得」についてです。
相続財産については相続税が課税されますので、相続税の計算を行い、必要なら相続税の申告書を提出します。そのため原則として相続において確定申告は不要です。
しかし相続により取得した財産であっても、これを売って売却益が生じたときは、その所得に対して所得税が課税されます。そのため確定申告をしないといけなくなります。
相続した家屋や土地、株式などを売るときは大きな利益が出やすいため要注意です。
相続財産の換価分割も所得が発生する
遺産分割の方法にもいろいろあります。現物分割といって、財産そのままの形で各々取得していくケースもあれば、いったん売却し、得られた現金を分割するケースもあります。
後者のケースを「換価分割」と呼びます。
誰も取得する必要がなく、管理の手間なども大きい財産があるときは、換価分割を行うことで公平な遺産分割が実現できるのです。
ただし換価分割を行うときはいったん相続人の名義に移してその財産を売却することになるため、利益が生じたときは相続人に所得税が課税されます。確定申告が必要になることもあるため、注意してください。
ケース②相続財産から収入が生じた
相続財産を取得した後で、当該財産から収入が生じることもあります。
そのため収益性のある賃貸マンションや駐車場などを相続した方は要注意です。相続開始後の賃貸収入をきちんと管理し、当年における所得税の確定申告を行わないといけません。
※相続開始から遺産分割協議までは、基本的に相続人全員の共有財産となっているため、その間の収入は法定相続分で分割する。
ケース③保険金を受け取った(保険料負担者のみ)
被相続人を被保険者としたときの保険金(生命保険金・死亡保険金)について所得税がかかることがあります。その場合は確定申告をしなくてはなりません。
所得税がかかるかどうかは、保険料負担者と受取人の組み合わせによって次のように異なります。
課税関係 | 被保険者 | 保険料負担者 | 受取人 |
---|---|---|---|
Aに所得税が課税 | 被相続人 | A | A |
Aに相続税が課税 | 被相続人 | A | |
Bに贈与税が課税 | A | B |
上表にあるように、保険料負担者が被相続人であれば受取人に相続税が課税されますし、保険料負担者と受取人が異なるケースだと贈与税が課税される仕組みになっています。
ケース④相続財産を寄附した
相続財産を寄附した場合、所得は発生しませんので所得税の負担は生まれません。むしろ所得税の寄附金控除を受けることができるところ、この寄附金控除を受けるには確定申告によって寄附の事実とその内容を伝えておく必要があるのです。
そこで相続財産を寄附したときは、節税効果を得るためにも確定申告をしておきましょう。
ただし、寄附金控除の適用条件を満たすには、次のような公共性のある組織・団体等に寄附を行う必要があります。
- 国
- 都道府県
- 市区町村
- 認定NPO法人
- 公益社団法人
- 公益財団法人
- 社会福祉法人
- 学校法人
- 日本赤十字社の支部
- 政党
- 政治資金団体 など
被相続人の準確定申告は4ヶ月以内
相続人自身の確定申告とは別に、亡くなった方に関する確定申告が必要になるケースもありますのでご留意ください。このときの確定申告は「準確定申告」と呼ばれます。
例えば収入を発生する賃貸マンションなどを被相続人が所有していた場合、相続人が収入を得る以前に、その亡くなった年において家賃収入が発生していたはずです。会社員として給与が振り込まれている場合には会社の方で税務の処理を進めてくれますが、家賃収入を得ていた方については相続人が準確定申告をしなくてはなりません。
そのほか、個人事業を行っていた方や複数の会社から給与を受けていた方など、被相続人が普段確定申告を行っていた場合には準確定申告も必要になる可能性が高いです。
そして準確定申告に関しては「相続開始を知った日の翌日から4ヶ月以内」の申告義務が課されますので、早めに対応していかないといけません。
なお、税理士に代行依頼をすれば計算や申告書作成などの手間もかからなくなります。確定申告に関しても税理士に依頼できますし、相続税のことなどもまとめて任せられますので、プロに一度相談することも検討してみてください。