個人事業主がするべき税務調査の事前対策と調査時の対応
個人事業主として事業活動を続けていく中では税務調査を受けることもあります。不安に思うこともあるかもしれませんが、普段から適切な経理処理を行っておけば大きな問題ではありません。税務調査で困らないよう、大きな問題が起こらないように知っておきたいことをここで解説します。
税務調査実施の可能性を踏まえた対策
税務調査により申告内容のミスが発覚することもあり、修正申告への対応や加算税・延滞税の負担が発生することもあります。このような問題に悩まされないようにするには、日頃から適切な経理処理を行うなど、調査のリスクを低減することが重要といえます。対策の要点は次のとおりです。
適切な経費計上
経費として計上するものは「事業との関連性」がなくてはなりません。
個人事業主の場合は特にプライベートの支出と経費との混同が生じやすいため注意が必要です。
自家用車のガソリン代や通信費など、プライベートと仕事の両方に関わってくる支出については税務調査の際に問題視される可能性が高いです。
そのため経費計上するときは「この支出は純粋に事業のためのものといえるか」という視点で精査しましょう。
プライベートも兼ねている家賃などについては家事按分を行い、事業用の支出といえる適正な割合に相当する分だけを計上します。
日々の正確な記帳
経営状況を正確に把握し、適切な納税を行うためには、日々の取引を正確に記録することが大事です。
適切な形で経費計上を行うこと、そして売上の計上漏れが起こらないようにすることには特に注意しましょう。
意図的でなくとも税務調査の際に指摘を受けてしまいます。
計上漏れが起こらないようにするには、取引が発生した都度、遅滞なく記帳する習慣をつけることが重要といえます。1年分を放置し、確定申告の時期になって慌てて対処していると、ミスも増えます。また、どのような支出・売上であったかも忘れてしまい適切な処理ができなくなる可能性も高まります。
適切な税務申告
確定申告を期限内に行うことも重要ですが、その内容が正確なものとなるよう注意してください。過少申告や無申告はペナルティの対象となりますし、意図的に売上を隠すなど悪質な行為が発覚した際には重加算税と呼ばれるペナルティの中でも重たい処分を課される可能性があります。
また、申告にあたっては税法の改正にも注意が必要です。近年だと消費税に関する制度や電子帳簿保存に関する制度などで変更が続いています。
こういった税制改正に適応できていないと税務調査の際に問題となる可能性があります。
税理士との顧問契約
税務に関するプロである税理士の活用は事業者にとってとても有益です。
困ったことがあったとき、単発で相談・依頼をすることもできますが、事業活動を続けるのであれば顧問契約が推奨されます。
継続的に特定の税理士に相談することができ、日々の経理業務に関することから確定申告に至るまでさまざまな業務に関して頼ることができます。
上述した税制改正への対応から税務調査時の対応なども、包括的にサポートを受けることができるでしょう。
個人事業主は法人と異なり経理部門を持たないケースも多いため、顧問契約は特に効果的です。
ただしサポートの範囲に関しては顧問契約の内容によるため、契約時にどこまで対応してもらえるのかをよく確認しておく必要があります。
調査時の対応のポイント
税務調査の実施についての事前連絡がきたとしても、不正を疑われているとは限りません。落ち着いて各種書類を準備し調査当日を迎えれば良いのです。
準備すべきものとしては、過去数年分(少なくとも3年以上)の帳簿や証憑類です。
以下のものを当日までに準備して整理しておけば、調査はスムーズに進められるでしょう。
- 帳簿類(総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳・買掛帳、固定資産台帳など)
- 証憑類(領収書、請求書、納品書、契約書など)
- 申告関連書類(所得税および消費税の確定申告書、青色申告者なら青色申告決算書、白色申告者なら収支内訳書など)
ここで例示したもの以外にも、たとえば預金通帳(事業に関連する個人用の通帳も)やクレジットカードの利用明細、電子決済サービスの利用明細なども揃えておくと良いです。
また調査に対し非協力的な態度を取るべきではありません。調査が長引くだけで良い結果にはならないでしょう。
そしてもっとも避けなくてはならないのが虚偽の説明です。これには刑罰が科されることもあるため注意してください。