原稿料や講演料を受け取ったときの確定申告書の書き方とは? 経費の対象になるものについても紹介
原稿執筆による原稿料や、セミナー・講演会による講演料などの収益が出たとき、どのように確定申告をすれば良いのでしょうか。これら所得の申告は、それが本業か副業かによって区分や申告書の書き方が異なってきます。
ここでは、原稿料・講演料を受け取った際の確定申告書の書き方について、本業・副業に分けてそれぞれ解説していきます。また、対象となる経費についても見ていきます。
本業の場合の確定申告
まずは本業として原稿料・講演料の収入がある場合についてです。
「事業所得」として申告
原稿執筆やセミナー講演を本業としている場合には、「事業所得」として確定申告します。
「事業所得」とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から生ずる所得をいいます。申告を行う際、青色申告承認申請書を税務署へ提出している場合には青色申告を、していない場合は白色申告を出すこととなります。
事業所得の確定申告書の記載方法
確定申告書の具体的な書き方についてですが、本業である事業所得の申告には確定申告書Bの様式を使用します。
第一表の「収入金額等」には給与所得や配当所得など様々な所得の区分が並んでいます。その中の「事業所得」の欄に、1年を通して事業で得た収入金額を記載します。
続いて、収入金額の欄の下の方に「所得金額」の欄があります。そこには先程と同様に所得区分が並んでおり、その中の「事業」に、収入金額から必要経費を差し引いた金額を記載します。
必要経費については後述する「原稿料・講演料の対象となる経費」を参考にしてください。
ここまで記載したら、次は第二表に移ります。
第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」という欄を見ると、所得の種類、種目、支払者の名称・所在地、収入金額、源泉徴収税額の項目が見つかりますので、それぞれを埋めていきます。
報酬の支払者が複数いる場合には複数行記載し、その後「源泉徴収税額の合計額」に全てを足した税額を記載します。
そして第一表に戻り、先程記載した源泉徴収税額の合計額をそのまま「税金の計算」の欄の「源泉徴収税額」に記入します。
以上が事業所得の確定申告書の書き方です。ポイントは、収入金額も所得金額も必ず事業所得の欄に記入するという点です。
副業の場合の確定申告
次に、本業とは別に副業として原稿の執筆や講演を行っている場合について見ていきましょう。
20万円を超える場合は「雑所得」として申告が必要
サラリーマンなどで給与所得を得ており、その上で原稿料・講演料などの副業収入がある場合には、“1年を通して所得が20万円を超える金額か、それ以下か”によって申告の要否が決まります。
所得金額 | 申告の必要性 |
200,000円超え | あり |
200,000円以下 | なし |
ここで注意したいのが、この20万円という基準が収入金額ではなく所得金額であるという点です。収入から必要経費を差し引いた金額が所得金額となります。
必要経費については後述しますが、原稿料・講演料の収入を得るために要した経費の額を差し引き、その結果が200,000円までなら申告不要、200,001円以上なら申告の必要があるということになります。
そしてこのとき、「雑所得」として確定申告を行います。
「雑所得」とは、利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得をいいます。副業にかかる所得の他に、公的年金や非営業用の貸金に対する利子なども雑所得に当たります。
20万円以下でも申告が必要なケース
先程説明したように、一般的には20万円を超える場合に確定申告の必要になってきます。
しかし、20万円以下であっても申告が必要になるケースがあります。
それは、“本業の収入が2,000万円を超える”場合です。
この場合は、雇用元で年末調整の対象外となるため確定申告が必要なのです。
また、副業が給与収入の場合も申告が必要です。
年末調整の対象となるのは原則として1か所のみであるため、対象外となる勤め先の給与については申告することで税金の還付を受けられることがあります。この場合は後述する雑所得ではなく給与所得として申告を行います。
さらに、住宅ローン控除や医療費控除を受けたいとき、納めすぎた税金の還付を受けたいときなども確定申告の必要があります。
雑所得の確定申告書の記載方法
雑所得でも基本的な書き方は事業所得と同様です。
異なるのは、事業所得の欄ではなく雑所得の欄に記入するという点です。
第一表の「収入金額等」のその中で雑所得を意味する「雑(その他)」の欄に記入します。
また、「所得金額」の欄についても、「雑」の欄に記入します。
第二表の源泉徴収税額と第一表の「税金の計算」の欄の「源泉徴収税額」については、事業所得で説明した通りに記入します。
原稿料・講演料の源泉徴収について
記載方法を説明した際に少し触れましたが、原稿料および講演料が報酬として支払われるとき、基本的には源泉徴収が行われます。
そのため、報酬金額から源泉徴収税額が引かれた後の金額が手元に入るという形が一般的といえます。
この源泉徴収税額は、所得税の前払い分として扱われるため、申告の際に確定した税額からすでに支払った税額を差し引きし、残りを納付することになります。反対に、納めるべき年間の税額が源泉徴収された金額よりも少ない場合には、支払った分の源泉徴収税額が還付されることになります。
源泉徴収税額は、報酬金額によって異なります。下表を参考にしてください。
報酬金額 | 源泉徴収税額 |
1,000,000円以下 | 報酬金額×10.21% |
1,000,000円超え | (報酬金額-1,000,000円)×20.42%+102,100円 |
例えば報酬500,000円の場合は、500,000×10.21%=51,050円の源泉徴収税額、また報酬1,500,000円の場合は、(1,500,000-1,000,000)×20.42%+102,100=204,200円の源泉徴収税額となります。
源泉徴収税額については支払調書に記載されているため、ここに記載の金額を参考にしても良いでしょう。受け取った支払調書は大切に保管しておきましょう。
原稿料・講演料に関する経費にできるもの
最後に、原稿料・講演料の対象経費について確認しておきましょう。
基本的に経費の対象にできるかどうかは、“その収入を得るために必要な費用であったかどうか”で判断されます。
必要経費として認められる支出とは具体的などのようなものなのか、次の例を参考にすると良いです。
〈原稿料の場合〉
- オフィスの賃貸料
- 執筆するためのパソコンやプリンター
- 執筆するための文具代
- 印刷するためのコピー用紙代
- 執筆するための書籍代
- 打ち合わせを行うための交通費
〈講演料の場合〉
- オフィスの賃貸料
- 資料を作成するためのパソコンやプリンター
- 資料印刷のための用紙
- 打ち合わせを行うための交通費
- 講演先に行くための交通費
注意しなければいけないのが、“全額が経費と言えるのかどうか”です。
例えばパソコンやプリンターについて、原稿の執筆や講演のためだけに使用しているのではなく、プライベートでも使用しているというケースがあります。このような場合は、プライベートで使用した部分と事業で使用した部分について、使用割合で按分して経費相当額を算出しなければなりません。
また、事業のみに使用するオフィスを借りている場合は賃料を100%経費にできますが、自宅をオフィスとしている場合は、面積などで使用割合を算出して按分します。
このように、その支出が100%事業のための支出かどうかを今一度見直し、必要に応じて按分して経費計上するようにしましょう。
さらに、経費として計上した分については、実際に支払ったことのわかる証憑書類を保管しておくことが必要です。破棄せずきちんと保管しておきましょう。按分についても根拠となった算出方法を残しておくことが望ましいです。
以上、原稿料・講演料の確定申告書の書き方および対象経費について解説しました。
本業として収入がある場合はもちろん、副業の場合も提出が必要になることをきちんと理解し、申告書の提出を忘れないようにしましょう。