確定申告とは?各種税金に関する確定申告の必要性と申告状況について
一定の場合、国民には納税の義務が課せられます。しかし、無差別に際限なくお金を納めなければならないというわけではありません。法令に従い、納税の必要性やその金額の大きさが判断されます。そしてその重要な判断材料を提供するために「確定申告」は行われます。
ここで確定申告とは何か、基本的なことを整理し、各種税金に関する確定申告の状況などを理解しておきましょう。
確定申告とは?
確定申告は税額を確定させるために行う申告のことです。
最も一般に知られているのは所得税に関する確定申告でしょう。しかし税金にもいろいろな種類があります。贈与税や消費税などもありますので、確定申告は所得税に限った手続というわけではありません。
所得税の確定申告について
そもそも「所得税」とは、勤務先企業から受け取る給料や商売により自分で稼いだお金などにかかる税のことです。
1年間で手に入れたお金から必要経費などを差し引き、残った利益分が「所得」として所得税の課税対象となります。所得税は、所得が大きくなるほど適用される税率も高くなるという特徴を持っています。
ただし、実際には諸般の事情に応じて一定額を所得から差し引くこと(控除)が認められており、所得額に単純比例して納税額が増えていくわけではありません。
なお、所得税(および復興特別所得税)の申告が必要になるのは、「給与の収入金額が2,000万円を超える」「給与1ヶ所(年末調整済)の他に給与・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える」場合などです。毎年1月1日から12月31日までの期間を対象に計算し、翌年の3月15日までに申告することが義務付けられています。
消費税の確定申告について
「消費税」は、商品や製品、サービス等の販売・提供を対象に、一律に課せられる税のことです。その意味で全員に公平な税とも考えられますが、所得税のように課税額の大きさに応じて税率が変動するわけではないため、資力がある人にとっては割合小さな負担で済むとも考えられます。
なお、本来の納税義務者は事業者です。事業者の売上げを算定基準として課税がなされます。ただ、一般消費者としては自分たちが負担しているという感覚を持っている人も多いかと思います。というのも、消費税相当額は販売・提供価格に織り込まれており、実質負担者は消費者となっているのです。この特徴を捉え、消費税のように納税者と実質的な負担者が異なる税を「間接税」と呼ぶこともあります(納税者と負担者が一致する所得税などは「直接税」と呼ばれる)。
消費税に関して確定申告が必要になるのは「基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者」と「基準期間における課税売上高が1,000万円以下だが『消費税課税事業者選択届出書』を提出した方」です。法定申告期限である3月31日までに確定申告を行わなければなりません。
なお、売上が1,000万円以下であれば消費税に関する負担は免除されています。
贈与税の確定申告について
「贈与税」は、財産の贈与を機会に課される税金のことです。ある人が亡くなって、当該被相続人の財産を相続人が引き継ぐ場合に課せられる「相続税」を補完するという性質を持っています。相続税では課税されない部分にも課税機会を与え、生前贈与による過度な節税を抑制する役割も担っています。
相続税の課税を補完するという性質上、相続税における累進構造よりも重く設定されており、比較的高い税率になっています。
贈与税に関する確定申告が必要になるのは、「年間110万円を超える贈与を受けた」ケースが基本です。その他、贈与を受けた方のうち「配偶者控除の特例」「相続時精算課税」「住宅取得等資金の非課税」を適用する場合にも申告が必要です。
なお、法定申告期限は所得税に係る手続と同じで、翌年の3月15日とされています。
確定申告の近年の状況
執筆時点(2022年4月)において公開されている、最新のデータに基づき、近年の確定申告状況を紹介していきます。
まずは所得税についてです。
年間の申告者数は267万人です。しかし実際に納税が必要になった方は82万人です。税金は基礎控除など各種控除制度を適用した上で課税対象の有無が見られますので、実質、納税が必要になる基準額というものが存在しているのです。実際、この数値を見て分かるように、3分の2以上の申告者は納税をしていません。
所得金額5兆635億円に対し、納税額は3,578億円となっています。
消費税については、申告数は14万6,000件、納税額は805億円となっています。
贈与税については、申告者数6万8,000人に対し納税が必要な方は5万人、納税額は298億円となっています。
e-Taxの利用状況について
近年は確定申告の方法も変化しています。
技術的な進展があったことにより、公的な手続に関してもオンラインで行う機会が増えています。確定申告に関しては「e-Tax」を利用することで自宅等から手続ができるようになっています。
実際に自宅等からe-Taxを使い申告書を提出した数は、所得税において98万1,000人、贈与税において3万1,000人であると示されています。これらのデータは令和2年における調査に基づいているのですが、会計ソフトを利用して自宅から申告書を出した人は令和元年と比べて約1.7倍にも上ります。e-Taxが周知され、また、税制上の優遇措置が取られたことにより大幅な利用者増が見られています。
スマホを使ってe-Taxで申告した人も令和元年から役1.6倍も増えた11万人となっていますし、マイナンバーカードを使ってスマホから申告した人は5万人と令和元年から約8倍増加しています。
確定申告に関しては所得税や消費税、贈与税など、各種税に関する基本的な知識を身につけることも重要ですが、確定申告の手続内容、e-Taxの使い方などを知っておくことも大切なことです。税額の計算方法や申告方法などで分からないことがある場合は、専門家に相談して解決すると良いでしょう。