事業承継税制のメリットはどこにあるのか|活用前に注意点も確認
株式会社での引き継ぎは「先代が持っていた自社株式の受け取り」を意味します。このときの株式には贈与税や相続税がかかりますが、その支払いを待ってもらえる仕組みとして「事業承継税制」があります。
この制度により実際にどのようなメリットが得られるのか、また、本格的な着手前に確かめておくべきポイントについても整理しておきましょう。
事業承継税制で自社株の税負担を軽減
中小企業の経営者が持つ自社の株式は、会社の業績が良いほど高い値段で評価されます。その株式を子や後継者が受け取れば、受け取った側に贈与税や相続税がかかります。
ところが上場していない会社の株式は、市場で売って現金に換えることができません。手元にお金は入らず税金を請求される形になり、これが事業承継を躊躇させる要因の一つにもなっています。
そこで効果的なのが法人版の事業承継税制です。
この制度は、株式にかかる税金の納付をいったん止める制度です。所定の要件を満たせば税金の全額を猶予してもらうことも可能です。
事業承継税制のメリットは大きく3つ
同制度の具体的なメリットとして次の3点が挙げられます。
- 後継者が納税のための現金を用意せずに済む
- 株式を分散させずに後継者へ渡せる
- 承継したあとの環境変化に対応する仕組みがある
税金の負担を軽くできるというだけでなく、承継そのものが実行しやすくなるといった効果も期待できます。
後継者が納税資金を用意せずに済む
従業員が十数人~五十人ほどの会社でも、承継時にかかる税額が数百万円から数千万円に達することがあります。グループ会社をまとめて引き継ぐようなケースでは億単位に達するでしょう。
これだけの金額を後継者個人が工面するのは現実的ではありません。とはいえ会社から資金を出して納税に充てれば、設備や人材に回せるお金がその分減ります。
このような場面でも同制度を使えば納税を猶予できるため、本人の負担を回避して余計な悩みを解消しつつ、承継後の経営に集中できるでしょう。
株式を後継者にまとめて渡せる
納税資金が足りないと、「株式の一部だけを渡す」あるいは「ほかの相続人にも分ける」といった対応をとらざるを得なくなります。そして株式が分かれると議決権も分かれ、重要な決定のたびに調整が必要になります。
この点、同制度の特例措置の要件を満たすと対象株式数に上限がなくなるため、株式を後継者へ集中させて引き継いでもらえます。親族以外を含むすべての株主から、最大3人までの後継者に渡すことも可能です。
税金の問題だけでなく、経営の意思決定に対する課題も解決できるというメリットが得られるでしょう。
承継後の変化に対応する仕組みがある
将来やむを得ず会社を第三者へ売却(M&A)や廃業する場面もやってくるかもしれません。そのケースでも、承継時より株価が下がっていれば、その時点の実際の価値をベースに税額を再計算して差額を免除する仕組みが存在します。
この制度設計により、「将来経営が行き詰まったら莫大な税金が残る」という先代と後継者のリスクや不安もカバーされています。
手続き前に確認しておくべき注意点
この制度は、認定を受けて終わりというものではありません。検討段階から押さえておきたい点を整理します。
確認事項 | 詳細 |
|---|---|
猶予が取り消される場合 | 「後継者が代表を退く」「対象の株式を譲渡する」など一定の事情に該当すると猶予が打ち切られ、税額に利子税を加えて納付することになる |
継続的な報告義務 | 申告期限から5年間は都道府県と税務署へ毎年書類を提出し、6年目以降も3年に1度の届出が続く |
会社の資産状況の変化 | 会社資産の大半が投資用の資産などで占められる状態になると、制度を続けられなくなることがある |
ほかの相続人との関係 | 株式を後継者に集めるほど、ほかの相続人が受け取る財産は減り、遺留分をめぐる争いが起きやすくなる |
専門機関の関与 | 計画の作成や雇用の報告には、国が認定した支援機関(税理士や金融機関など)の指導助言が必要になる |
特に知っておきたいのは、これらの義務が十年単位で続くという点です。年数が経つうちに社内の担当者が代わり、書類の提出を忘れて猶予が取り消される事態も起こり得ます。誰が管理するのかをあらかじめ決め、顧問税理士と共有しておくことが欠かせません。
早めの準備が承継後の業績につながる
同制度は贈与でも相続でも使えますが、早めに準備して贈与で承継することを視野に入れると良いでしょう。
承継後の売上高で比較すると、「贈与で承継した企業」の方が伸び率は高いといわれています。相続による承継では先代の急な体調不良などが引き金になりやすく、後継者は準備が整わないまま経営を引き受けることになるのも関係しているでしょう。
一方の贈与であれば時期を自分たちで決められ、その間に後継者を育て、取引先や金融機関との関係も整えられます。
また期限の問題もありますので、計画を策定してこれを提出、そして実際の贈与や相続時期にも留意しなくてはなりません。制度の活用を少しでも検討されているのであれば、まずは税理士にご相談ください。










