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赤字でも確定申告をしたほうが良い4つの理由について

事業を営んでいると、必要経費が収益を上回り、損失が出ることもあるでしょう。この状態を一般に「赤字」といいますが、赤字になると所得はゼロとなるため、所得税を納税する必要はなくなります。そして納税額がゼロであるため、確定申告を行う義務も課されません。
ただ、赤字であっても確定申告したほうが良いケースがあります。どのような場合に、なぜ、赤字でも確定申告をしたほうがいいのか、ここでその4つの理由を解説していきます。

 

損失の繰り越しをするため

青色申告の場合、赤字で確定申告することで翌年以降の3年間、損失の繰り越しが可能になります。つまり、翌年以降に黒字で所得が出た場合に、その所得金額から繰り越した損失分の金額を差し引くことができるのです。そうすることで、黒字の年に納税する所得税の金額が減り、節税できるというメリットがあります。

 

ある年で“100万円の赤字”、その翌年で“200万円の黒字”が発生したシチュエーションで考えてみましょう。

 

【赤字で確定申告しなかった場合】

赤字の年 :所得0

赤字の翌年:所得200万円

 

【赤字で確定申告した場合】

赤字の年 :所得0

赤字の翌年:所得100万円(黒字200万円-赤字繰越分の100万円)

 

赤字になった年に関しては、確定申告をしてもしなくても、所得および所得税の大きさに変わりはありません。

 

しかしその翌年に注目してみると、差が出ていることに気が付きます。
赤字で申告しなかった場合は所得200万円となるところ、申告をした場合には黒字の200万円から前年の赤字繰越分100万円を差し引くことで、所得を100万円にすることができています。

 

このように、赤字でも確定申告をしておけば、翌年以降の納税の負担を軽減することができるのです。

 

ただここで注意すべきが、“損失の繰り越しができるのは青色申告のみである”という点です。
損失繰り越しは青色申告対象者に限定された制度であるため、白色申告の場合は適用できません。
白色申告の場合は、以下を参考にしてみてください。

 

白色申告における損失の繰り越しについて

白色申告の場合は、上で解説したように、青色申告と同様の損失繰り越しはできませんが、全くできないわけでもありません。

 

「変動所得」の損失繰り越しは可能です。
この変動所得とは、その年によって大きく変わる可能性のある所得のことです。例えば、漁業や養殖などの所得がこれに該当します。
また、災害によって資産が被害を受けたときの「被災事業用資産」の損失についても繰り越しが可能です。

 

このように、白色申告の場合は青色申告と比べると損失繰り越しできる範囲が限定されてはいますが、繰り越しが完全にできなくなるわけではないのです。

 

還付を受けるため

売上金の内容によっては、売上金額に応じて源泉徴収される場合があります。例えば、原稿料や講演料、弁護士・公認会計士などの資格を持つ人に対する報酬などが源泉徴収の対象となります。

 

このとき、支払者が報酬額から源泉徴収額を差し引いて報酬を支払い、納税者に代わって所得税を納税してくれています。徴収される額は、本来納めるべき所得税の額と一致しているものではありません。実際、年間を通した収支の結果、所得がゼロになったのであれば、所得税を納め過ぎていることになります。

 

この分を回収するには、赤字であっても確定申告をする必要があります。確定申告により「確かに払い過ぎた分がある」と認めてもらい、その分の還付が受けられるようになります。

 

証明書を入手するため

確定申告をすれば「課税(非課税)証明書」が入手できます。

 

これは自治体が発行する証明書で、所得金額や課税額などが記載されます。
赤字だからと申告をしなかった場合、これを受け取ることができません。

 

「課税(非課税)証明書」は様々な場面で必要になります。
例えば、住宅ローンの審査や保育所の入所申し込み、クレジットカードの発行、金融機関での融資の申し込みなどです。
これらの手続きが必要だと予測される場合には、赤字でも確定申告しておくことが望ましいといえます。

 

特に住宅ローンの審査に関しては、過去3年分の課税証明書を提出するケースが多いため、前年だけ申告すれば良いというわけにはいきません。今後数年の間に住宅ローンを組む可能性のある事業主は、特に注意が必要です。

 

国民健康保険料の優遇を受けるため

国民健康保険に加入している場合、所得がなければ非課税世帯となり保険料の支払いが優遇されます。
しかし確定申告をしなければその優遇は受けることができません。所得がないということを証明できないからです。

 

そのため、申告をすれば受けられたはずの社会保険に関する優遇措置が、申告しないために受けることができなくなり、高い保険料を支払わなければならなくなります。
この観点からも、赤字でも申告したほうが良いといえます。

 

以上のように、赤字で確定申告することにも「損失繰り越し」「還付金」「証明書発行」「国保の優遇」などの面でメリットがあります。翌年の生活にも影響してきますので、できるだけ赤字であっても確定申告はしておくようにしましょう。

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公認会計士・税理士
中務 徳浩(なかつか のりひろ)
所属団体等

公認会計士協会

税理士会

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ごあいさつ

あなたは何のために仕事をしていますか。生活の糧を得る、というのも一つの答えでしょう。

でもそれだけですか。事業を開始する時には、「このようなことをしたい」「こうなりたい」という夢があったはずです。現状と夢で描いた理想とのギャップを把握し、よりよい将来につなげるために、なんでもご相談ください。

プロフィール

昭和54年生まれ・大阪府八尾市出身

平成14年 関西大学経済学部卒業
同年10月 公認会計士第2次試験合格、会計士補登録
平成14年 朝日監査法人(現、あずさ監査法人)入社
平成18年

公認会計士第3次試験に合格し、公認会計士登録

公認会計士として監査業務、コンサルティング業務の幅広い経験を積む

平成27年

日本電産株式会社経理部へ出向

管理会計・利益管理・事業計画策定等の業務を2年間経験

出向満了後、あずさ監査法人を退職し税理士登録

平成29年 中務総合研究所を独立開業

事務所概要

名称 中務総合マネジメントサポート
所属団体等 公認会計士協会、税理士会、八尾商工会議所
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